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医療面接で用いる2つのゴロ合わせ 上手に使って上手な医療面接を

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 みなさまこんばんは、あのつぎはイです。今日も更新やっていきます。

 今日の記事は、前回に引き続き医療面接のネタになります。前回の記事では医療面接で用いる二つのクエスチョンの違いと使い方を説明しました。

 今回は、クローズドクエスチョンに当てはまりますが、クローズドの欠点である「質問の漏れ」を回避するために、主訴(患者さんが一番訴えたい症状)に対して網羅的に質問するためのゴロ合わせを一つ、それから交通外傷などで使われる問診用のゴロ合わせを一つご紹介したいと思います。

 今回の記事では

  1. 上級医に患者の説明をしようとしても、いつも症状の説明に漏れがあって困ってる研修医や医学生
  2. 外傷などでスムーズに問診(=必要十分な医療面接)を取って身体診察に移りたい研修医
  3. ゴロ合わせは聞いたことがあるが、なかなかうまく質問できない若手医師

 に向けて説明をしていきたいと思います。

 まず結論を書いておきましょう、ドーン

  1. 症状を聞く上で役立つ語呂合わせ:OPQRST
  2. 必要最小限の問診をするうえで役立つ語呂合わせ:AMPLE

 ちなみに、自分がこのゴロ合わせを聞くときに実践している質問方法も『』にして書いていってみようと思います。

 それではさっそくやっていきましょう。

 ちなみに、前回の記事は下からどうぞ。

医療面接(問診)でオープンクエスチョンとクローズドクエスチョンを上手に使い分けよう こちらから

OPQRSTとは

 まずはOPQRSTとは、以下の頭文字となります。

・O: Onset 発症様式

・P: Palliative & Provoke 寛解、増悪因子

・Q: Quality & Quantity 性状と強さ

・R: Region, Radiation 部位と放散痛

・S: Symptoms 随伴症状

・T: Time course 時間経過

 それぞれの頭文字を解説していきましょう。

Onset 発症様式

 まずはこちらから。症状について、その発症がどのようなものだったのかを聞きます。

 例えば、急激に起こったのか、それとも徐々に表れた症状なのか。

 このOnsetが非常に重要になる代表例が

「クモ膜下出血」

 と言われる疾患です。これは脳の中の動脈という血管が切れて出血するという物。

 この疾患の発症様式は非常に急激で、患者さんによっては明確にタイミングを表現できたりするくらいです。例えば

「野球中継を見ていて、○○というバッターがホームランを打った瞬間に自分も急に頭痛が来た」

 というもの。野球中継を見ている時、というだけでなく、されに突っ込んだ内容までしっかりはっきりしている感じです。

 個人的には聞き方としては

『いつからですか』と聞いてから、「急に来た」と言われた時は『何をしていたときか覚えていますか』とか『何時何分でしたか(何時ころではダメ、何分まで言えるかどうか)』と突っ込んで聞いたりします(そうすると、意外と急性にもレベルがあるのがよく分かるようになります)。

 逆に、徐々にひどくなったとか、時間に幅があるときは、最後のTで詳しく聞きます。

Palliative & Provoke 寛解、増悪因子

 これは専門用語のために一般人には分かりづらいかもしれないですね。

 寛解因子というのは分かりやすく言えば<○○していたら良くなった>という○○の部分です。「横になったら楽になった」の横になるとか、「背中を丸めると痛みが引いた」の背中を丸めるとかですね。

 増悪因子はその逆で、症状をひどくさせてしまう原因です。

 この因子が重要になる例としては

「労作性狭心症」

 を挙げてみましょう。こちらは心臓の栄養血管が細くなってしまい、安静時は無症状ですが階段を上ったりすると心臓に十分な栄養が渡らなくて苦しくなってしまう、当然立ち止まれば楽になる、という増悪寛解因子がはっきりしている病気ですね。

 こちらはそのまま直接聞けばいいのですが、寛解因子については、やはり一般人になじみのない言葉のため聞き方に注意した方が良いでしょう。

 自分の場合は『その症状は何かをすると楽になったりしましたか』とか『良くなったり悪くなったりしますか』と聞いてからその状況を聞いてみるとか工夫しながら聞いています。

Quality & Quantity 性状と強さ

 これも聞き方に工夫がいる項目となります。強さについてはどう聞いても答えてくれますが、せっかくなら半定量化して聞いてみるのも手です。『今回の症状は人生で最大の症状を100とするとどれくらいですか』とか、もしくは病棟とかで症状の時間経過を追うのであれば『一番ひどかった時を10とすると、今日の症状はどれくらいですか』とかですね。

 quality=性状については聞き方を工夫したり、鑑別疾患を考えるならしっかりクローズドに聞くべき項目です。こちらの代表例は

「急性心筋梗塞」

 でしょうね。「ちくちくした胸の痛み」ではなく、「何か重たい物にのしかかられて様な痛み」「何とも言えない重苦しい感じ」など、明確な痛みとは異なる違和感のような感じで答えてきます。なので『痛いってどんな感じですか』と聞くのと同時に、『チクチクズキズキしますか』とか、『重苦しい感じというか、なんとも言えない重たい感じですか』とか、かなりクローズドに聞いたりします。

Region, Radiation 部位と放散痛

 部位については、特に骨折とかで重要です。身体診察の項目ともかぶりますが、具体的にどこの骨を狙って骨折を疑うのか、どの臓器に重点をおいて診療を行うか、この辺りが重要になります。逆に内蔵系の痛みって、どこって言えない感じになりますので、個人的には『どこが痛むか一本の指先だけで言えますか』って聞いたりします(ちょっと意地悪ですかね)。

 放散痛については、主訴=一番訴えたい症状以外に同じような症状が他の部位に無いか聞くことです。これは次の項目と同じですので、次の項目でお話しします。

Symptoms 随伴症状

 こちらは、はっきりと『ほかに症状は無いですか』とか、『同じ時期に気になりだしたほかの症状はありますか』と聞いています。

 ただ、随伴症状を聞く時って、結構主訴と同時か、その後に出てきた症状を聞く人が多いんです。それで足元をすくわれるのが

「急性肺血栓塞栓症」

 でしょう。エコノミークラス症候群という言葉の方が有名ですね。これ、随伴症状として足の血栓(=血の塊)が下肢血流の交通渋滞を起こして、足がパンパンに腫れたりするんです。もしくは足が腫れなくても、エコノミークラス症候群の言葉の通り、長時間同じ姿勢であったという経歴があったりします。なので、「息が苦しい」と言われた時は、『それと同時に出現した症状ってありませんか』と同時に起こった症状だけではなく『その症状の前に何か体調の変化はありませんでしたか』って主訴以前の症状も聞くようにしてみてください。

Time course 時間経過

 最後はこちら。これはオープンクエスチョンで患者さんが勝手に話してくれるのでいいのですが、先ほどの随伴症状と同じで主訴”以前”の事も聞けるようになると良いです。先ほどの肺塞栓症を例にすれば、エコノミークラス症候群の名前の通り長時間同じ姿勢であった経歴があることが多いので『息苦しくなる前1-2週の間に長時間同じ姿勢になったりしませんでしたか』とか聞けるようになると、一歩先の病歴が取れるようになります(やりすぎると患者さんの話が長くなって診療が止まってしまいますが、バランスが難しいですね)。

AMPLE

 こちらは下の項目の頭文字をとったものです。

・A: Allergy アレルギー

・M: Medicine 内服歴

・P: Past medical history 既往例、既存症

・L: Last meal 最終食事

・E: Event 症状の経過

 これ、確か外傷で必要最低限聞き出すべき問診項目として活用されだしたかなんかのはずで、どちらかというと診療上必要な情報を聞き出すのに使います。例えばアレルギーは、今から使う薬は大丈夫か確認するためだったり、最終食事は麻酔と挿管道具を決めるのに必要だったり、そんな感じの項目になります。一方で、上記の項目は患者さんの背景を知る上でも重要ですので、外傷診療だけではなく内科診療でも用いられるようになってきているみたいです。

 聞き方にコツが必要だったりするので、こちらも個別に見ていきましょう。

Allergy アレルギー

 アレルギーです。自分も花粉症です。一応アレルギーを聞くときは『食べ物』『飲み薬』『注射』あたりで突っ込んで聞くことにしています。薬を2つに分けているのは、『薬のアレルギーありますか』と聞くと、時々検査用の注射薬を言ってくれなかったりするからです。

Medicine 内服歴

 これも、出来ればお薬手帳とかで確認します。

 ここって、個性が出ませんか?

 薬の名前は「商品名」と「一般名」の二つがあります。それをごちゃまぜに書いていたり、もしくは用法はともかく容量が書いてなかったり(1mgと2mgでは全く意味が違う薬もたくさんあります)。

 個人的には、出来れば容量はきちんと書いて欲しいなーと思います。

Past medical history 既往例、既存症

 ある意味ここも医師の問診の腕が問われます。『既往歴はありますか』というのはナンセンスですが、『何か病気がありますか』と聞いても、高血圧で薬を飲んでいても「特にないです」と答えてきかねません。そこで自分は必ず『今までに入院したり手術したりしたことありますか』と『今どこかクリニックや病院に通ったりしていますか』と2段構えで聞くことにしています。

Last meal 最終食事

 これも、目的は麻酔とか手術とか挿管に関わる項目なので、別に何を食べていたかは重要ではないわけで、シンプルに『最後に食べ物を口にしたのは何時くらいですか』で良いと思います。

Event 症状の経過

 これは前回の記事(こちらから)とか上のOPQRST質問とかで確認してみてください。外傷だと、どういう状況だったのかさえ分かればいいんですけどね。

まとめ

 いかがだったでしょうか。今日の記事では「質問の漏れ」を回避するために、主訴(患者さんが一番訴えたい症状)に対して網羅的に質問するためのゴロ合わせを一つ、それから交通外傷などで使われる問診用のゴロ合わせを一つ紹介してきました。

 結構日常診療で使えるゴロ合わせなので、これらを使ってスムーズに、そして過不足のないプレゼンを上級医にしてみてはいかがでしょうか。

 それでは今日はこの辺で、 have a nice day and see you next day!