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医療面接(問診)でオープンクエスチョンとクローズドクエスチョンを上手に使い分けよう

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 みなさまこんばんは、あのつぎはイです。今日も更新やっていきます。

 今日からしばらく医療ネタで登場する記事は、医師と患者の間で行われる医療面接と言われる物を取り扱っていきます。

 以前は問診と言われていた医療面接。今でも問診表はありますが、最近では「問診=医師が一方的に質問するもの」と誤解される可能性があるということで、「医療面接=医師と患者が対等な立場で話し合うもの」という名前と形に変わりつつあります。

 この医療面接、ないがしろにされがちですが、医療を行う上で非常に重要な立ち位置にある一方、なかなか上手にできていない先生たちがいるのもまた事実。自分もついつい長話になってしまっているところです。

 そこで、今回から医療ネタはシリーズとして、この医療面接を色々な切り口から見ていこうと思います。

 この医療面接シリーズでターゲットにしているのは

・4月から病棟での実習が始まる(もしくはすでに始まっている)が、問診の仕方に不安の残る医学生

・4月から初期研修が始まるが、初診の患者さんに最初にどう医療面接(問診)をしたらいいか分からない医学生

・初期研修の最中だが、患者さんと信頼関係が築けているか不安な研修医

・患者さんから必要な情報を過不足なくとるのに苦労している研修医

 こんな先生たちの医療面接スキルがアップできるよう話を展開していきます。

 そんな中で今日の記事は、医療面接で医療従事者が用いる質問の方法について、2つの方法を紹介します。同時に、その2つの方法の使い分けも話していければと思います。

 病院を受診された方ならわかるかと思いますが、大体先生たちは最初に

 「今日はどうされましたか?」

 と質問されると思います。これがオープンクエスチョン(open question)の代表例。

 そして、

 「その症状はいつからですか」

 というのがクローズドクエスチョン(closed question)の代表例です。

 この2つの質問方法について、その方法と良い点/悪い点を順番に説明していこうと思います。

  それではさっそくやっていきましょう。

 ちなみに、医療ネタについては以前のものは下から閲覧ください。

  • 医学部の6年間で学ぶ内容 ざっくり紹介してみよう
     一部 二部 三部
  • 専門医レポートの考察に苦しむあなたへ 自分が考えるネタの見つけ方 こちらから

オープンクエスチョンとクローズドクエスチョン

 さっそくそれぞれの質問方法について説明しましょう。

オープンクエスチョンとは

 こちら、英語で書くとopen questionとなります。openの名の通り、質問の答えが限定されない、“自由度の高い”解答のできる質問方法という事です。質問がopenという意味ではないですよ。

 個人的にオープンクエスチョンは「患者さんが話を始めるきっかけを作る」と「患者さんにしたい話をしてもらう」のが目的かなと思います。

 具体例としては次のようなものです。

  1. 初診の患者さんで最初に
    「今日はどうされましたか」
  2. 上の質問の回答に続いて
    「それはどんな流れや感じだったのかお話ししてもらってもいいですか」
  3. 医療面接の途中や終わりに
    「私に話しておきたい事とか、聞いてみたい事とかありますか」(yes/noに近い質問ですが、yesなら「何でしょう」と続けられるので、openとして扱っていますし、結構自由に話し始めてくれます)

クローズドクエスチョンとは

 こちらは英語で書くと、closed questionとなります。closedという言葉通り、答えが「yes/no」となるような、答えが限定されるものを質問するというものです。

 個人的に学生さんや初期研修医の先生たちは、クローズドクエスチョンをする時は、鑑別疾患の絞り込むため、病態の具体的評価を行うため、ROS(Review of System)を一通りさらうためにする、と意識して少なくすることを心がけた方が良いかもしれません(理由は後述しますが、簡単に言うと、学生時代や初期研修医時代って、意識してないとクローズドクエスチョンを多用してしまうからです、時間が無いから)。

 質問の方法としては、以下の物が代表的ですが、聞き方はいろいろありますね。

  1. オープンで聞いて、「その症状はいつからですか」
     回答は時間のみに限定
  2. 「(胸が痛いと聞いて)苦しくないですか」
     yes/noの典型例
  3. 「アレルギーはありますか」 …etc

オープンクエスチョンの良い点と悪い点

良い点

 このオープンクエスチョンを行う理由=良い点は主に2つです。

  1. ラポール(医師患者の信頼関係)が形成されやすい
  2. 患者自身の話す時間が無いので、患者満足度が高い

 医療というのは医療関係者と患者さんとの信頼関係の上に成り立ちます。そのため、患者さんの満足度が上がり、信頼関係が構築されると、以降の身体診察や検査への流れ、治療に対する理解も格段にスムーズになります。

悪い点

 逆に、どうしても患者さんの言葉で話を聞く格好となるので、医療者側から見ると、話が冗長であったり、不要な情報が加わったりして、どうしても時間が長くなってしまいます。これが大きなデメリットですね。

 なので、初診の患者さんで、まだ信頼関係が築けていない場合は、最初だけではなく、途中や終わり際でもオープンクエスチョンを組み入れると良いでしょう。

 逆に、定期的に外来に訪れる患者さんであったり、病棟で何度も診察を繰り返している患者さんであったりする場合は、効率を考えるというと変ですが、オープンクエスチョンは最初に「今日はどうですか?」とか「お加減いかがですか?」と聞くくらいにして、早めにクローズドクエスチョンに移るというやり方でも良いかもしれません。

クローズドクエスチョンの良い点と悪い点

良い点

 良い点については、オープンクエスチョンの悪い点をカバーする感じになります。

  1. 聞きたいことをズバリ聞けるので、効率よく情報が取れる
  2. 患者さんが気付いていなかった(話さなくてもいいと思った)点もカバーすることができる

 特に①ですね。救急外来とかで時間のない戦場では、いかに患者さんと信頼関係を築きながら、効率よく情報を取っていくかが重要となります。これは一生の修練でしょうけど。

悪い点

 こちらも大きく2つあります。

  1. 一方的に質問する感じになるので、患者さんの満足度が下がる=クローズドばかりだと信頼関係の構築に時間がかかる
  2. クローズドばかりだと、こちらが聞いていない項目は拾えない可能性が出てくる

 1番は、特に学生さんに気を付けてほしいですね。もともと学生というだけで向こうも身構えますから、クローズドばかりだと、患者さんが困ってしまうかもしれません。

 どちらかといえば学生さんには、オープンクエスチョンがメインで、どうしても聞いてみたい事だけクローズドで聞くでも良いかもしれません。そうすると、患者さんもしたい話を学生さんに出来て満足、医療者側もスムーズに医療が進行出来て満足というwin-winな関係が出来上がる気がします。

 2番目は研修医の先生たちにとって要注意です。オープンでも聞けない可能性はありますが、クローズドばかりだと、医療者側が質問しなかった項目は患者さんも答えてくれないので、重要な症状や状況が聞き取れていなかった事態が発生しえます。なので、時間の限られた救急外来でクローズドを多用するときは、必ず聞き逃さないように質問項目を用意することをおススメします。これが上で研修医の先生たちがクローズドクエスチョンを多用しないように話した理由です。

自分が医療面接をする時

 最後に自分が医療面接をする時の流れを3つの場面に分けて考えてみます。

初診の患者を相手にしたとき

 この時は、なるべく早く信頼関係を築きたいので

  1. 「(問診表の有無にかかわらず)今日はどうされましたか」とオープンで聞いて、「その症状の出始めはどのような感じでしたか」など、更にオープンクエスチョンを2-3度行う
  2. クローズドクエスチョンで鑑別上必要な症状の状態確認(発症タイミングや増悪因子など)と、既往歴などを聞く
  3. 身体診察に入る前に「あらためて話しておきたい事や聞いてみたいことはありますか」とオープンのきっかけを用意する

 という感じです。特に最初のオープンクエスチョンはなるべく患者さんの話を切らず(途中で遮らず)に話をしてもらいます。その後は診療時間に合わせて適宜ですね。

定期外来の患者さんを相手にしたとき

 これは最初に「今日はお加減いかがですか」と聞いたら、あとはクローズドクエスチョンで聞きたいことを聞きつつ、出来る身体診察を行っていきます。

病棟の入院患者さんの毎日の回診

 これも「今日はお加減いかがですか」と聞いて、クローズドクエスチョンが多めですね。ただ、やっぱり環境の変化もあるので、「夜眠れましたか」とか「ご飯はどうですか」などの、普段の事を聞いたりして、少し長めに時間を取ります。あとは病態の改善があるか確認するクローズドクエスチョンを必ず毎日行いますね。

まとめ

 いかがだったでしょうか。今日の記事は医療面接シリーズの1回目として医療面接で医療従事者が用いる質問方法として、オープンクエスチョンとクローズドクエスチョンの2つの方法を紹介しました。ぜひこの2つの質問を自在に利用しながら、有意義な医療面接を繰り広げていただければと思います。

 それでは今日はこの辺で、have a nice day and see you next day!